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配管系統の外部腐食(コロージョン)・機械的損傷対策

<富士ファーマナイトのコンポジットリペア技術>

1.はじめに

日本国内に立地する発電施設、ガス施設、コンビナート等の製造施設において、設備の高経年化が大きいな課題となっている。中でも機器、配管の外面腐食、劣化により内部流体が漏洩する等の事例が増加傾向にある。それらを防止するための手段としてファーマナイト社のコンポジットリペア技術は非常に有効である。

2.コンポジットリペアの概略

ファーマナイト社は石油、化学、電力などのプラントの機器、配管のメンテナンスに関する数々のユニークな技術を持つグローバル企業であるが、1990年代よりコンポジットリペア技術に着目して研究と検証を進めてきた。その概要は、補修部表面にグラスファイバーシートを巻いて電気的に絶縁し、その上にカーボンファイバーシートを積層して各層を樹脂で接着、硬化させることにより、機械的な強度を高め、外部腐食の進行を防止する技術である。これにより外部腐食やへこみなどの機械的損傷などにより漏洩などの事故が予想される場合に、更新を含む大規模な修理なしに、さらなる腐食の進行を止め、機械的な強度を高めて延命化を可能とするものである。本技術は数式理論と各種の検証試験を得て、2015年に制定された ISO24817"Petroleum, petrochemical and natural gas industries -- Composite repairs for pipework -- Qualification and design, installation, testing and inspection” に基づいて設計、施工される。


コンポジットリペア(炭素繊維複合材補修)の概略図

              第1図 施工概略図

3.補修技術

ISO24817はコンポジットリペアの有効性の検証試験、設計、施工、施工者訓練、メンテナンスの各プロセス毎に要求項目を定めている。各プロセス毎に要点のみ紹介する。

3-1 検証試験

ISOではコンポジット素材の基本性能試験を実施して、各品質データを明確にして数値が適切であることを確認することを要求している。第1表は品質データの一部である。コンポジット層は炭素繊維の方向に対して非常に大きな強度をもっている。当社は2種類の炭素繊維シートを荷重条件などの状況に応じて使い分け、設備に合わせた最適な設計を行っている。

   材料の品質データ例  

これらの基本性能データは、コンポジットリペア施工後に顧客側によって行われた確認試験、試験片による化学耐性試験、実物の鋼管を補修して行った性能試験をもとに得られたものである。補修素材は10年以上にわたって強度を保ち続けている。

写真1は腐食が200×150mmの範囲に発生し、鋼管の肉厚が75%に減肉した試験材を補修して鋼管内面に加圧して耐久試験を行った様子である。試験の結果、健全部が28MPaで損傷したのに対し、補修部は損傷せず強度が増したことが確認された。

耐圧試験による補修性能確認

                                       写真1 補修試験例

3-2 機械的損傷の補修

パイプラインの損傷は、外部からの衝突などによるへこみ等の機械的な損傷が主な原因である。ファーマナイト社は、コンポジットリペアにより機械的損傷を補修した配管の疲れ寿命の増加を測定する試験を実施している。この試験は実験室にて行われたものである。試験材はAPIパイプライン鋼管X42の外径323mm、肉厚4.8mmの溶接管で、溶接部のない管壁上、長手溶接線上、突合せ溶接線上の各2ヶ所ずつに外面から人工的にへこみを作った。最初に直径の15%の深さのへこみを作り、内圧をかけて直径の3%分だけ押し返してへこみを安定させた。

試験材のひとつにはへこみにコンポジットリペアを施した。写真2は配管のへこみの状態を示し、写真3は補修後の状況を示す。この配管にガス輸送管の最大許容運転圧力(降伏点の72%)をかけてすぐに大気圧まで減圧することを繰り返して行い、へこみ部分から漏洩が発生するまでの繰り返し回数を計測した。補修なしと補修したものとの比較を第3表に示す。

               横から見た配管図

               上から見た配管図

                           写真2 へこみを作った配管
                        (右:補修前の充填剤による平滑化)

         写真3 コンポジットリペア後の試験配管

コンポジットリペアを施した試験配管は全ての補修箇所で25万回の圧力サイクル後にも漏洩を起こすことはなかった。この試験では補修により疲労強度を高め、疲れ寿命を飛躍的に増大させることの十分な性能を実証できた為、途中で試験を中止した。鋼管のエンドキャップ溶接2ヶ所から試験中に漏洩が起こったが、炭素繊維による補修を行ったへこみ箇所からの漏洩は発生しなかった。

繰り返し破壊試験の結果

この様に、25万回もの圧力サイクルに耐えることが出来るのは、コンポジット補修以外には方法はないと考える。

3-3 設計

コンポジットリペアはISO24817に準拠して標準設計プロセスで設計される。当社はファーマナイトグループ共通の設計パッケージに基づき、「Math CAD」を用いて設計を行っている。

すべての計算とドキュメントは電子化されており、変更や修正点を容易に確認できると共に、容易に妥当性を検証、確認することができる。事前調査の段階で、システムの詳細、損傷状況の詳細、耐用年数など顧客の要求事項を明確にすることで、より精度の高い設計が可能となる。設計結果は施工図面に反映され、現場からも確認することができる。第2図は計算書の一例である。

 


                  第2図 計算書例

3-4 施工

すべてのパラメータを確認し、設計が完了した結果として施工要領図が発行される。この要領図には炭素繊維シートの積層数、貼り付け寸法、施工手順などが記載されており、現地施工時の最も重要な作業指示書類である。第3図に施工要領図の一例を示す。

コンポジット素材の高い性能は、検証試験によって明らかとなっているが、施工する手順を間違えれば、求められる補修性能を発揮することはできない。コンポジットリペアの施工手順は標準化されており、プロセス毎に管理項目と管理値が定められている。これらは施工手順書に明確に記載されており、実測値を必ず記録することで作業のばらつきやミスを防止している。施工完了後、これらの記録用紙は、目視検査記録、写真、補修の形状測定の順に施工報告書にまとめられる。

                                       図3 施工要領図

3-5 施工者の訓練と資格認定

コンポジットリペアでは施工の品質は施工者の技能に大きく依存する。従ってISOでは施工者の資格と訓練および認定制度について実施項目が定められている。実際に現地で施工を行うためにはInstallerまたはSupervisorの資格取得が必須である。Installerはほとんど全ての条件の施工が可能であるが、非常に特殊なケースの施工や、Installerを認定するための教育訓練にはSupervisorの資格が必要となる。また施工中の施工管理書類の最終確認はSupervisorが行う。SupervisorはInstaller資格取得後所定の実務経験を経て認可される。

ファーマナイトグル―プでは独自に3段階のランクを定義して、InstallerとSupervisorを関連づけると共に、それぞれのランクに必要な訓練と経験を明確にした上で責任の範囲を明確にしている。教育訓練は訓練プログラムに従って行われるが、ファーマナイトグループの技術センターである英国ファーマナイトで受講するか、Supervisorの資格取得者を招聘して受講することが必要である。資格取得後も実際の施工件数または研修所などでの実際の施工を模した訓練回数を消化することが義務づけられており、技能の低下を防いでいる。当社もこの制度に従って、施工者はInstaller資格を取得しており、技能の維持向上に努めている。

3-6 検査とメンテナンス

補修後のメンテナンスは、炭素繊維が高い耐久性を持っているため、一般的には必要としない。少数の化学物質(アセトンなどの溶剤、アミン類などの化学物質)が素材を劣化させる。設計アセスメントの段階で起こり得る劣化については評価する。

外部腐食はコンポジットリペアによって進行を完全に防ぐことができるので、一般的には特に管理する必要はない。ただし、定期的な目視検査で補修部に異常が発生していないことを確認することが必要である。また、外部要因による新たな損傷や内部の亀裂等により、補修した炭素繊維が傷ついていない事を確認する。内部腐食がある場合には注意深い監視点検が推奨される。外面のコンポジットで内部腐食の進行を妨げることはできない。配管壁が失われても、運転条件が穏やかならばコンポジット壁によって漏洩を防ぐことができる場合や、設計寿命までに、配管壁が完全になくなってもコンポジットによって運転状態を保つように設計する場合もあるが、一般的に内部腐食の進行を監視することが必要である。平均的な配管の肉厚検査は過流探傷試験によってモニタリングされるが、X線による検査方法は、局所的なくぼみを確認するために最も有効である。

4.状況に応じた実際の補修例

コンポジットリペアには配管や機器の損傷状況に応じて3種類の施工を行う。当社では機器状況に顧客の要望を加味して要求性能を満足した最もコストパフォーマンスの高い施工を選択する。




5. おわりに

当社は会社発足後33年間、リークシール事業を専業としてきた。当社のリークシールはファーマナイトプロセスによって、プラントの運転を止めずにオンラインでプラント配管からの流体の漏洩を止めるユニークな技術である。今回の新たなサービスは、損傷により漏洩の発生が危ぶまれる部分の外面腐食を止め、配管および機器類を補強するなどの恒久的な補修を行って延命化を図るものであり、リークシールと同様に設備価値の維持向上に役立つものと確信している。

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